「カピタン」と「深紅の帆」
 Origaの2ndアルバム「illusia」に収録されている「カピタン 〜A Voyage with The Odessa Harbor Club Band in 2043〜」は、アレクサンドル・グリーンの「深紅の帆」という物語が元になっているらしい。ということで、ここでは「カピタン」と「深紅の帆」についていろいろと。
 「深紅の帆」のおおざっぱなあらすじは次のとおり。カペルナという、西欧のどこかと思しき海に近い村で、アッソーリという女の子が生まれました。アッソーリは諸事情により不幸な子供時代を送っていましたが、ある時、魔法使いを自称する歌の収集家が、冗談交じりで、深紅の帆の船に乗って王子様がお前を迎えにくる、とアッソーリに言いました。アッソーリはそれを信じ続けました。で、話は変わって、西欧のどこかと思しきあるところに、アーサー・グレイという少年がいました。グレイは自分のお城でいろいろな経験をしながら育ち、やがて船に乗ろうと思うようになり、その後実際に船に乗り、やがて船の船長(カピタン)になりました。ある時、グレイはカペルナの近くの岸に上陸し、そこでたまたまアッソーリと出会います。その後グレイは、アッソーリと深紅の帆の船についての話を聞き、自分の船に深紅の布で帆を張り、カペルナに向かいました。かくしてアッソーリはグレイと共にカペルナを去っていきました。
 「カピタン」は、明るくて軽快でカッコいい感じの歌だけど、「深紅の帆」は、どちらかというと全体的に多少暗めというか、しっとりとした感じというか、「辛いこともあるけど最後はハッピーエンド」というかで、「カピタン」の雰囲気とはけっこう違ってると思う。雰囲気的(歌詞じゃなくってメロディーの)には、むしろその次の「雲の住人」や、1stの「愛のかけら」の方が自分的には似合ってる気がする。でも、やっぱり捉え方によっては「カピタン」みたいな感じのもありかも。「カピタン」の歌詞のような感じの捉え方なら、やっぱり明るくてカッコいいメロディーがいい。
 次に歌詞について。「カピタン」の歌詞は、アッソーリがカピタン・グレイの船に乗って出発したところから以降のことについてのようだが、「深紅の帆」では、2人の船出は最終章の一番最後の部分で、物語自体も船出の翌朝、空が白み始めたところで終ってるので、「カピタン」の歌詞は、「深紅の帆」の続き、といった感じで書かれたんだと思う。
 三聯目とかに見られる「本は開いておきましょう」というのは、原文は「Не закыты двери книги」で、直訳すると「本の扉は閉じないでおきましょう」くらいの意味になる。これはひょっとしたら、「読み終わった後も本を閉じないで、更にその続きを読んでいきましょう」という意味なのかもしれない。
 歌詞中に「107ページ」の言葉として「おまえの夢を見るだろう」という言葉が出てくるが、「深紅の帆」の中にその言葉は見つからない。見落としたのかもしれないとも思ったが、カピタンは舵をとりながら言っているので、当然2人の船出以降のハズだが、それは最後の数段落だけで、少なくともその中には見られない。あえて近いといえば、「давным-давно пригрезившееся лицо(長い間夢見ていた(アッソーリの)顔)」というのが出てくるが、これは半ば作者の言葉であって、カピタンがアッソーリに言った言葉ではない。それに、近いのは意味的にであって、実際に使われている単語自体は、歌詞の「всегда мне буешь сниться(いつも私(=アッソーリorオリガ)の夢を(あなた=カピタンは)見るでしょう)」とは全然違う。それに、「深紅の帆」という物語の量からしても、本にした場合は一ページあたりの文字数を少なくしたとしても、せいぜい100ページくらいが限界だと思う。ひょっとしたら、Origaの読んだ「深紅の帆」の本は、全部で106ページまでしかなくって、「それの続き」ってことで歌詞の中に「107ページ」が出てきているのかもしれない。
 あと、日本語訳の最後の聯に「最後の行が溶けてくわ」という言葉があるが、「深紅の帆」の最後は、「...」で終っていので、これが「溶けてく」ってことなのかもしれない。で、その続き、ってことでこの「カピタン」という歌がある、ってことを暗示してるのかもしれない。そういえば、邦題のサブタイトルには「2043年」というコトバもあり、オリガが2043年にコンサートを開いて歌った、という設定だ、ということを表わしているらしい。このあたりも、この「カピタン」が、「それから」についてってことを暗示しているのかも。

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